血が通っている仏

仏画を描く時、尊像の肌は胡粉、丹、黄土淡口の三色に、ほんの少しの錆群青を加えて塗ります。錆群青は肌に血の気を表す為です。尊像は御顔が命、眼、鼻、口、眉と描き入れる時、いつも手が震えなかなかおもうようにならず、先日も落胆していたところ、少し違って良いんですよとおっしゃる方が。長く能の面を作られた方で、左右対称は表情が無くなるから、わざと違わせていたとの事。能役者の動きや角度によって、面の表情が変化するのは、そういう事だったのかと納得。仏の御顔も見る人の心の角度によって、哀しくもあり、苦しくもあり。歌にも通ずる事であると思いました。血の通っている歌は何時までも心に残ります。