2020-01-01から1年間の記事一覧

太田芙蓉第二歌集『小丘萌ゆ』

平成24年から令和2年3月まで、かりん誌に載った御歌からの御歌集。作者が訪れた日本各地、外国を詠まれている御歌が一冊の中に溢れている。 この世はうたかた、かりそめの夢、仮りの宿りとも、そんな感覚にふっと、とらわれてしまった、不思議な御歌集。 日…

中平武子第二歌集『しらべは空に』

中平様は第一歌集を編まれた時、歌は自分探しでもあり書き留めることはささやかな生きる証であるとあとがきに記されている。それから16年目のこの度の第二歌集『しらべは空に』では短歌はアルバムのように自分の人生記録であり愛おしいと記されている。 ぶな…

土屋千鶴子第四歌集『一行のスープ』

私は一冊の詩集を出している。1987年、今から33年前の38歳の頃、『しんきろう』というタイトルであった。このたび、土屋千鶴子様より第四歌集『一行のスープ』を賜り、そのなかの うすくうすく透きとほりたる若き日の言葉のやうにくらげは泳ぐ の一首に出会…

園田昭夫第一歌集『少しだけ苦い』

園田氏は高校生の時石川啄木の歌集に出会い、「新しき明日の来るを信ずといふ自分の言葉に嘘はなけれど」など日日の中でどれだけ励まされたか知れないとあとがきに記している。お父様を詠まれたお歌に「職人の父の飯場暮しに仲間らのわれへの苛めやむことの…

藤本満須子第三歌集『如月の水』

作者は1939年生まれの「歌林の会」の方。これまで様々な水の歌を歌い続け、それらの水の歌が作者自身の81年間の根幹となっていると、あとがきに記されている。歌集『如月の水』の表紙の表は、流水文様、裏には雪輪文様が描かれている。流水は、しばしば人生…

山内活良第一歌集『赤方偏移』

山内活良氏は短歌結社「歌林の会」で共に学んでいる同年輩の方です。山内活良氏の故郷は北海道の美深町。一昨年になるが私は第一歌集『空とかうもり』を出版した折、大変御丁寧なお手紙を頂いた。私の亡き母の出生は網走の津別町、生前母と共に北海道へ二度…

椿

私は椿が好きだ。特に籔椿の紅色が何とも言えない。1997年発行の馬場あき子第16歌集『青椿抄』のあとがきに次のような一文がある。一部抜粋してみたいと思う。 いま私の眼前にも、椿の青い蕾が日々にふくらみをましている。たとえば『新撰和歌六帖』に、「い…

挽歌

昨年の6月に母を亡くしてから、母の歌が次々と生まれくる。歌は、挽歌でもあると聞いた事がある。思いを掬いとって31文字にこめる、情の器の短歌。亡くなった母を詠める時に詠んでおきなさいと、沢山の方から励まして頂いた。 米川千嘉子第三歌集『たましひ…