川島結佳子氏、歌集『感傷ストーブ』
今年四月の歌集出版を祝う会にて受付を担当して下さった。歌集『鈴さやさやと』を出版されていた佐山加寿子氏との合同の祝賀会であった。その折、近々歌集をお出しになるとお聞きしていた。若々しい感覚に出会えて嬉しい。
ハードルは高齢化にて低くなりアラサーのわれ「女子」と呼ばれん
「お前はもう、死んでいる」とか言いながらあなたと食べる胡桃のゆべし
報告書の蟻のようなる読点を潰して潰して潰す
百円のサボテン枯れる否 枯らす私は砂漠よりも砂漠で
ホームレスは消されて錆びた金属がアートですよと置かれる公園
「芸人になりたい」と言ったラジオネーム感傷ストーブは今何してる
素顔から顔がどんどん出来ていく ここは渋谷のマクドナルドだ
五〇〇〇字の文字打つわたしに「使い方わかってますか」とFacebookが
ゴミ箱から空き缶拾うホームレス散った桜は地面に捨てて
診察時間ニ分の耳鼻科に何がある。子どもは全身全霊で泣き
暗闇の中スイッチを探るかのように触ろうとする貴方に
水面にふわっと浮いた「楽だな」を「死は悲しい」で沈める 深く
本棚に本差しこむように置いたのだ祖母の骨壷共同墓地に
「で、お前は何故いるんだ」と言いたげなアロワナと目が合う何回も
黒服をいつも着ている風景の真ん中に穴開けたみたいに
ただ生きてゆくことだけを意識して生きる折り畳み傘を持たずに
いただいた歌集を読んだ私なら相聞歌には付箋を貼らない
ドライフラワーなのか私は出会う人出会う人皆「変わらない」と言い
私の地図でこの先は滝。新大阪突き抜け進む新幹線は
爆発を見たことがない爆発のあとのゴーヤのあっけらかん
大通り駆けぬける今の私なら排気ガスすら動力として
カフカ『城』のよう 慰霊碑に近づけず動物園をぐるぐるとゆく